漫画「チェンソーマン」「ファイアパンチ」の作者で知られる藤本タツキさんの長編読み切り「ルックバック」が、公開と同時にすごい話題になっています!
ストーリーにいろんな意味が込められているのですが、中でも京都アニメーションの事件や、ロックバンドoasisの名曲「Don’t Look Back in Anger」になぞられているのではというのが一番のポイントで、たくさんの人に考察されています。
それでは、ジャンプ+で公開された藤本タツキさんの「ルックバック」が京アニ、オアシスの名曲とどういう関係があるのか考察した結果を詳しく解説していきます!
「ルックバック」は京アニ事件追悼マンガ?
『ルックバック』
2021.7.19 ジャンプ+掲載。140ページ超、の大長編読切は
規格外の最新作。その衝動も、いつか追想へーー。 pic.twitter.com/vFhYBbOuU0
— チェンソーマン【公式】 (@CHAINSAWMAN_PR) July 18, 2021
「ルックバック」がどこで読めるかというと、ジャンププラスで無料で読むことができます。
ルックバックが公開されたのは2021年7月19日で、京都アニメーションの事件が起きたのは2019年7月18日です。
京アニ事件からちょうど丸2年が経った翌日に公開されました。
登場人物は漫画家を目指す「藤野」と、漫画背景を描く「京本」の同級生2人です。
漫画家「藤野」は藤本タツキさん本人のことだと思われ、漫画背景を描く「京本」=京アニと藤本タツキから付けられていると思われます。
背景美術を学びに美大に通っていた京本が通り魔に襲われてしまうのですが、これは京都アニメーションが襲撃された事件をイメージさせるシチュエーションとなっています。
登場人物や漫画の内容、公開タイミング的に、京アニ事件の追悼的な作品だと世間が騒ぐのも分かりますね。
「ルックバック」とオアシス「Don’t Look Back in Anger」の関連性を解説
漫画タイトル「ルックバック」の意味と、曲名「Don’t Look Back in Anger」の意味について解説しますね!
漫画タイトル「ルックバック」の解説
- 「ルックバック」の1ページ目1コマ目に「Don’t」の文字
- 「ルックバック」最終ページには「In Again」の文字
- 漫画タイトル「ルックバック」
3つを合わせると「Don’t Look Back in Anger」となります。
これはUKロックの代名詞oasisの名曲で、ライブでもフェスでも全員が大合唱する世界的な曲なんです。
また、2017年に起きたマンチェスターテロ事件(コンサート会場襲撃事件)での追悼集会でも大合唱されているので、おそらく同じように京アニへの追悼の想いが込められているのではないかと考えられます。
「Don’t Look Back in Anger」の意味と「Look Back」の意味を解説
「Don’t Look Back in Anger」は直訳すると、「振り返って怒らないで」という意味です。
意訳すると、「起こってしまったことに対して後ろ向きになってはいけない!振り返らないで前へ進もう」という意味。
まさに京アニ事件は、今から怒ってもあの時は戻ってこないわけで、私たちは前を向いて突き進むしかないんですよね。
また、タイトルは「ルックバック(look back)」なので「振り返れ」というメッセージも込められているのだと考えました。
事件のことは「いつか風化してしまう恐れがあるが忘れてはならない。後ろ向きになる必要はないが振り返る必要はある」という、ダブルミーニングになっているのではないでしょうか。
いや、違います!トリプルミーニングなんです!
「ルックバック(looK back)」は直訳すると「背中を見ろ」ですよね。
背中を見ろで考えたら、「わたしは前に進むぞ。どんなことがあっても漫画を描く。わたしの背中を見てついて来てほしい。」というようなメッセージまで入ってると考えられませんか?
実は漫画内にも「京本も私の背中みて成長するんだなー」というセリフがありますし、亡くなった京本が書いたラストシーンの四コマタイトルが「背中を見て」です。
漫画タイトル「ルックバック(look back)」は、実際はこの直訳「背中を見て」であり、「Don’t Look Back in Anger」が隠された意味です。
トリプルミーニングだと想像したら、藤本タツキ先生の天才ぶりにちょっとゾワっとしてしまいました。本当だったらすごいですよね!
映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のオマージュ
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は、クエンティン・タランティーノ監督の作品でディカプリオとブラッドピットのW主演の映画です。
エンタテインメント業界(映画、役者)で生き抜くことに神経をすり減らすリックと、いつも自分らしさを失わないクリフが対照的に描かれた作品なのですが、漫画家「藤野」と背景を描き続ける「京本」の関係にとても似ています。
影響を受けているというか、元ネタと考えていいでしょう。
オマージュシーンは現時点で2箇所確認されています。
- 京本が美大で通り魔に襲われるところを、藤野が助けにきて怪我を負うのですが、救急車で搬送されるシーンがまさに映画の中の一つとそっくりです
- 「ルックバック」の最終ページ、無造作に散らかったDVD?本?の表紙がまさに「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のディカプリオとブラッドピットの2人なんです
藤本タツキ「チェンソーマン」とのクロスオーバーを考察
藤本タツキさん自身の作品「チェンソーマン」と似たシーンがいくつか出てくるので紹介したいと思います!
- 「京本が美大で描いていた扉の絵」と「デンジの夢に出てくる扉」
- 映画館のシーン
- 「チェンソーマンのレゼ編の街並み」と「チェンソーマンのデンジ争奪戦の街並み」
これら以外の背景や登場人物の衣装、ポーズなど全て紹介しきれないほど細かい部分で似ているところがたくさんあるんです。
設定まではかぶっていませんが、チェーンソーマンの背景やポーズなどを入れることで、同じ世界線または同じ時間軸の話しであることを伝えたいのではないかと考えました。
京アニ事件はまさにチェンソーマン連載中に起こった悲劇です。藤本タツキ先生は連載中に強い衝撃を受けたに違いありません。
「チェンソーマン」続編を意味している?
漫画家である藤野の部屋には漫画「シャークキック」の11巻がずらっと並んでいるんですよね。11巻だけ何冊もあって強調されています。
チェンソーマンの第1部が11巻で完結していることと関係がありそうですよね。
そして「シャークキック」の11巻の最後のページには「このつづきは12巻で!」と書かれています。
京本の死のショックで連載を中止していた藤野が、ふたたび漫画を描き始めるといったシーンになるのですが、これは同じくチェンソーマンの続きも書き始めるよという匂わせなのではないでしょうか。
京アニの惨劇があっても漫画家、アニメーターは立ちどまることなく前を向いて描き続けなければいけないというメッセージのように受け止められます。
むしろ私たちも日々の営みを止めてはならない、前を向いて歩いていかなければいけませんね!
ちなみに主人公である漫画家・藤野のフルネームは「藤野歩」。前を向いて歩んでいこうというメッセージがここにも隠されています。
「ルックバック」の口コミ・評判
『ちはやふる』の末次由紀さんのツイート。
素晴らしかった。全ページ横たわるのは執念。出会わなくても進む未来はそんなに変わらなかったかもしれないという描写が、運命の強さであり希望なのではないか。ノンフィクションはいつも私たちを殴ってくるけど、フィクションに繰り返し繰り返し救われる。描いていかなきゃ。 https://t.co/k5Rw71fZ7B
— すぐやる末次由紀ちはやふる47巻8/12発売! (@yuyu2000_0908) July 18, 2021
『ブラック・ラグーン』の広江礼威さんの感想。
タイミングを合わせたのかわからんけど鎮魂の詩になっている傑作。「起きたことは仕方がない」話でじんわり来る。うまいひとだなあー。あとタランティーノとかもそうなんだけど時系列挿入するの好き。苦手だけどそのうちチャレンジしてみたい。https://t.co/xa32OtZly1
— 広江礼威@2021/8/19ブラクラ12巻発売 (@hiroerei) July 18, 2021
『サプリ』のおかざき真里先生のツイート。
これはこの日に公開されたことに、同じ世界線を生きている私たちにとって、とても意味があるものなのだと思いました(深夜に漫画を描きながら)。さて私もコツコツもうひと仕事しよう。
ルックバック – 藤本タツキ | 少年ジャンプ+ https://t.co/qmVageIO0t— おかざき真里『かしましめし』4発売中 (@cafemari) July 18, 2021
『おやすみぷんぷん』の浅野いにお先生もコメントしています。
すごい。本当にすごい。すごいものを読ませていただきました。(語彙消失)
ルックバック – 藤本タツキ | 少年ジャンプ+ https://t.co/XLdN7maWcy— 浅野いにお/Inio Asano (@asano_inio) July 18, 2021
『代紋TAKE2』の渡辺 潤さんのツイート。
気軽にノーガードで読んでしまい
一瞬、漫画家辞めようと思ってしまった。
いや、まだ僕も足掻くけども。笑いるのよ…天才って。 https://t.co/fRHnZagtPF
— 渡辺 潤 (@Junwatanabe1968) July 19, 2021
どの先生も筆を止めてはならないようなコメントをされていますね。
起きてしまったことを受け止め、漫画家として作品を作り続けようという藤本タツキ先生の意思に感化されているようです。
漫画家が漫画家に衝撃を与える数少ない作品ではないでしょうか!
ルックバック考察!京アニ追悼とoasis名曲に関する3つの意味を解説!のまとめ
ジャンププラスで公開された143ページの長編読み切り「ルックバック」のタイトルや内容について解説してきました。
藤本タツキ先生の今回の読み切りがなぜこんなにもネットざわつかせたかというと、
- 京都アニメーションの事件から丸2年経た翌日に公開されたこと
- 漫画の内容と京アニ事件が連想できるものであったため追悼の意が込められていると捉えられた
- 登場人物「藤野」「京本」が藤本タツキと京アニにちなんでいること
- タイトル「ルックバック」の意味が「背中を見て」と「振り返れ」
- 漫画内にあった言葉を合わせて「Don’t Look Back in Anger」=後ろ向きにならず前へ進もう
- oasisの「Don’t Look Back in Anger」はマンチェスターテロ事件の追悼集会で歌われた
- 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」へのオマージュ
- チェンソーマンと似た絵がいくつも出てくる
- つづきは12巻=チェンソーマンの続きを書くよ
- 休載していた漫画家「藤本」が漫画を再び描き始めるシーンで完
京アニ事件への追悼と、事件を通して漫画家である自分がこれからできること、そのような強いメッセージが込められた作品でした。
「ルックバック」を読んだあとは感傷的になるのですが、それと同時に勇気をもらえます。
藤本タツキ先生の新しい一面を見させていただいた感じです。「チェンソーマン」のアニメ化も決まっていますし、さらなる活躍に期待します!
ジャンププラスの読切は話題になりやすいようで、同じく今月7月にも「腐女子除霊師オサム」がSNSを中心にバズっています。
ヒスバンとバンヒスの意味とは?腐女子除霊師オサムの主人公受けCP論争を解説!の記事では、漫画内に出て来た腐女子ワードについて解説していますので良かったら読んでみてください。